2023年11月

低進捗な日々。Miseqにも取り掛かれず、元素分析も終わっていない。というか、元素分析に関しては、装置の修理が必要という状況。前のラボと何も変わってないじゃん、と心の奥底で思う。一応、ボスが装置の修理はしていいよと言ってくれてるのが、唯一の救い。当たり前ではあるけど、前のラボはそれすらすんなり進まなかった。お金がなかったので。12月中にMiseqだけでもなんとかする予定。

月末は聴講だけではあったけど、微生物生態学会に行ったりしてきた。面白い研究もあった一方で、「類題を解いている」という感想を抱いた研究もちらほらあった。

面白いと思う研究は、新しい視点で世界を捉えようとする研究や実用を意識した研究で、改めて自分自身もこういう研究ができるようにしていきたいなあと思った。一番気に入ったのは、微生物生態系の挙動を理解するためにシミュレーションや流体デバイスを使って再現する研究で、これには本当に感動した。研究されていた方はもともと工学系だそうで、元工学部の人間としてはこの分野で工学の視点からできる研究があるんだ気づかされたし、別の領域の技術で殴りこんでくる研究はシンプルに面白い。

一方で、微生物学にありがちな「今まで未培養でした、単離しました、特徴づけしました」という研究は、やっぱり面白いとは思えなかった。もちろん、単離培養自体は簡単なものではないし、博物学的な研究に価値がないとも思わないのだけれど、「それで?」と思ってしまう自分がいる。生態学会では、もっとマクロな視点から現象を捉えていたと記憶しているので、微生物学特有の「病気」なのかもしれない。世界の理を知りたいだとか、何かの役に立つという視点が抜け落ちていて、ただやりましたという研究。次世代シーケンサーも、ロングリードシークエンスも、シングルセルゲノム解析も、結局のところ作った人が人がすごいのであって、ごく少数の優れた研究を除けば「類題を解いている」研究なんじゃないかなあと思わずにはいられない。時間の都合で、大きな目的の部分を話せないだけなのかもしれないけれど、実際のところどうなんだろうか。

それはそうと、絶賛キャリアパス迷走中。アカデミアに残るのか、海外での研究経験もないのにアカデミアに残ってやっていけるのか、じゃあ今から海外に行くのか、行けるのか、行ってダメだったらどうするのか、でも今のラボにいるとボスの思惑に振り回されるだけなのではないか、じゃあ別の研究機関で独立した研究をできるのか、そもそも任期付きの仕事を渡り歩いていくプレッシャーに耐えられるのか。こんな感じの不安が入り混じりすぎて、情報収集レベルの企業就活をぼちぼち始めている。

海外留学に関しては、ラボに客員で来ている准教授の先生がアメリカの大学で2年間ポスドクをやっていたということで、飲み会で対面になったときに話を聞いたりした。その先生の主張は、「言語の壁が大きすぎるから海外(欧米)は1年経験すれば十分」というもので、わりと斜に構えた主張だった。海外に1年もいれば欧米のスタイル(暦的な仕事の動き)がわかるからそれで十分ということらしい。そもそも、「行ったからといって国内で活躍できるわけではないし、行っていない人でも国内で活躍しているからあとは自分で判断したら」という感じだった。これは偏見かもしれないけれど、海外での研究経験のあるキラキラ研究者の人たちはすぐ海外に行こう!みたいなことを言う印象があるので、そういう考えの人もいるだなあとちょっと意外に思った。もちろん、この主張は私が頑張らなくてもいいという裏付けにはもちろんならないけれど。

一応、アカデミアでもう少し頑張ることも全く考えていないわけでもなくて、9月にはつくばの某研を見学していた。ただ、その時は学会の時期だったせいか活気もなくていまいちかもなあと思ってしまった。それに、行けたとしても今の延長線上の研究をし続けるビジョンしか見えなくて、苦しいことになりそうな予感もあった。人が少なくて大変だという研究統括の方が話しもあったりで、見学がいろいろとネガティブに作用した部分が結構あった気がする。

企業のほうは一社だけ小さい会社だけれど面白そうだなあと思っているところがあって、それも無理を言って見学させてもらう予定にしている。開発寄りの研究業務なんだろうなあと思いながらカジュアル面談を受けたのだけれど、予想に反して研究(論文執筆、学会発表)をしてほしいという話だったので、わりと心が傾いている。それに、自社のウェットラボも持っていて、基本はドライ解析をしてほしいけど必要あれば自由にそっちにも行き来していいということも魅力に感じた。ドライとウェットは表裏一体だと思っているので、必要があればウェットに立ち返れる環境は理想だと思っている。かっこつけたけれど、結局のところは研究がダメだったときにほかの仕事に移れる選択肢がある場所(企業)のほうが心理的に安心するのかもしれない。自分のことを自分が一番信用していないので。

こういうのは縁と運だと思うので、見学してみてネガティブな印象がなければそこに応募してしまおうかなと、少し思っている。とはいえ、明日の自分の気持ちがどうなっているかすら、自分にはわからない。

 

おわり